眼精疲労で困っている人はたくさんいると思います。目の周辺や奥が痛いとか重いとか、表現は人によって様々ですが、多くの人がこの疲労感につらさを感じています。
目の上の部分にも疲れを感じると、無意識のうちに眉毛あたりに力が入ってしまい、眉間のしわも深くなってしまいます。嫌ですね。
目が重くて、開けておくのすら億劫で、ただ閉じていたい。そう思うこともあるはずです。
そうなんです。まさにそれでいいのです。目の疲労感でつらい時は、ただ「目を閉じる」のが正解です。
目を使うということは、目の神経細胞を活発に活動させているわけです。
神経細胞の活動とは、基本的には細胞膜付近のナトリウムイオンやカリウムイオンの濃度変化です。
生体内ではイオン濃度は常に一定に保たれていますが、神経活動によってこれらのイオンは平衡状態から変化します。ですから、変化したイオン濃度を元に戻してあげなければなりません。
そこで重要なのが、アデノシン三リン酸(ATP)です。エネルギー通貨であるATPを消費することで、イオンの濃度は元の健やかな状態へと戻るのです。
ですが、ATPが消費されると、加水分解によってリン酸が順に外れ、最終的に「アデノシン」にまで分解されます。
この分解されたアデノシンが細胞の外へあふれ出し、細胞膜にあるレセプター(受容体)に結合することで、私たちは「疲労感』を自覚します。
これは身体からの、「もうこれ以上、目を使わないでくれ」「何も見ないでくれ」という切実なサインなのです。
目を休ませてあげれば、アデノシンは細胞内に回収され、再びATPへと再合成されます(サルベージ反応)。しかし、目を使い続けていると、ATPは消費され続けるため、見かけ上アデノシンが減りません。
だからこそ、目を閉じるのです。10分でも、あるいは5分でも構いません。
それだけで、目の回復感をはっきりと感じられるはずです。
目を閉じ、光という情報入力を遮断することで、ATPの過剰な消費が止まります。すると、溜まっていたアデノシンは自然と回収され、減っていくのです。
人間にとって、リン酸はとても重要な物質です。アデノシンからリン酸を離したり、つないだりしながら、エネルギーのやり取りを精緻に行っています。
私たちは、思っている以上に目を使っています。目を開けている間、ずっと光は網膜に飛び込んできており、目の神経は一瞬も休むことなく活動し続けているからです。
ですから、目の疲れを感じたら、その営みをそっと休ませてあげる。ただ、目を閉じたらいいんです。